Power Appsでアプリを作ったあと、多くの人が次でつまずきます。「これをどうやって社内に配るのか」という問題です。

URLを共有してブラウザで開いてもらう方法もありますが、Teamsの中にアプリを置くという選択肢があります。これは配布のしやすさだけでなく、ライセンス費用にも関わってくる重要な選択です。

Teamsに置くと何が変わるのか

ブラウザで使う Teamsの中で使う
アクセス方法 URLを開く/Power Appsの一覧から探す Teamsのタブから直接開く
ログイン 都度サインインが必要な場合がある Teamsにログイン済みならそのまま
周知 URLを伝えて回る必要がある チームに入れば全員が見える
使われやすさ 存在を忘れられやすい 日常的に開いている場所にある

最大の利点は「存在を忘れられない」ことです。せっかく作ったアプリが使われない原因の多くは、機能ではなくアクセスするまでの手間にあります。Teamsは業務中ずっと開いているアプリなので、そのタブに置くだけで利用率が変わります。

Teamsのタブ機能そのものはTeamsのタブとアプリ追加で解説しています。

Dataverse for Teams|Teams専用の無料データベース

ここがTeams連携で最も重要な部分です。

通常、Power AppsでDataverse(Power Platform専用のデータベース)を使うにはPremiumライセンスが必要です。ところがTeams内で使う「Dataverse for Teams」は、Microsoft 365のライセンスに含まれます

つまり追加費用なしでデータベースを使えるということです。SharePointリストでは扱いにくい構造のデータでも、Teams内なら選択肢が広がります。

ただし制限があります

Dataverse for Teams 通常のDataverse
容量 100万行または2GB 無制限
環境 チームごとに1つ 無制限
キャンバスアプリ 作れる 作れる
モデル駆動型アプリ 作れない 作れる
監査・アクティビティログ なし あり
フィールドレベルのセキュリティ なし あり
API アクセス・プラグイン なし あり

100万行という上限は、社内の業務アプリなら多くの場合で十分です。一方で、細かい権限管理や監査ログが必要な用途、外部システムとAPI連携する用途には向きません。

なお足りなくなったら通常のDataverseへアップグレードできます。最初から大きく構えず、Teams内で始めて必要になったら移行するという進め方が可能です。

見落とされやすい注意点

①チームを削除すると、データも消える

これは必ず押さえておくべき仕様です。Dataverse for Teamsの環境は、チームのライフサイクルに紐づいています

つまりそのチームが削除されると、関連する環境(=データ)も削除されます。「使わなくなったチームを整理しよう」という何気ない操作が、業務アプリのデータ消失につながる可能性があります。

業務で使うアプリを置くチームは、削除対象にしない——この運用ルールを最初に決めておく必要があります。

②Teamsの外では使えない

Dataverse for Teamsの環境は、その名のとおりTeamsの中で使うことが前提です。同じデータを社外向けサイトや別システムから参照したい場合には適しません。

③誰が使えるかはチームのメンバー次第

アクセス権は所有者・メンバー・ゲストというTeamsのメンバーシップに基づいて設定されます。細かく制御したい場合は、通常のDataverseのほうが柔軟です。

逆に言えば、「このチームの人が使えればいい」という用途なら、権限設計が非常にシンプルになります

ライセンスの考え方

Power Appsのライセンスでは「使う人全員にライセンスが必要」という点を解説しましたが、Teams内での利用はここに関わってきます

  • Dataverse for TeamsはMicrosoft 365ライセンスに含まれる——追加費用なしで使える
  • ただしプレミアムコネクタを使うならPremiumが必要——SQL ServerやSalesforceに接続する場合など
  • 標準コネクタの範囲で完結すれば、追加費用を抑えられる

「Teams内で、標準コネクタだけで作る」——これが最も費用を抑えられる構成です。社内の申請アプリや簡易な管理台帳であれば、この範囲で十分に作れます。

どう使い分けるか

状況 適した選択
特定のチームだけで使う業務アプリ Teams内+Dataverse for Teams
全社で使う/部門をまたぐ 通常の環境。ライセンスを確認する
データが100万行を超える見込み 通常のDataverse
監査ログや細かい権限管理が要る 通常のDataverse
既存のSharePointリストを使いたい Teams内でも通常環境でも可

データの置き場所を決める際は、データソース選びと委任で解説した「500件の壁」も併せて検討してください。

よくある質問

Q. Teams内でPower Appsを使うのに追加費用はかかりますか?

Dataverse for Teamsの利用はMicrosoft 365のライセンスに含まれます。ただしプレミアムコネクタ(SQL Server、Salesforceなど)を使う場合はPremiumライセンスが必要です。

Q. チームを削除したらアプリはどうなりますか?

環境ごと削除されます。Dataverse for Teamsの環境はチームに紐づいているためです。業務で使うアプリを置いたチームは、削除しない運用ルールが必要です。

Q. Teams内で作ったアプリを、あとで通常環境に移せますか?

Dataverseへのアップグレードが用意されています。容量や機能が足りなくなった場合に移行できるため、まずTeams内で小さく始めるという選択が取れます。

Q. モデル駆動型アプリはTeams内で作れますか?

作れません。Dataverse for Teamsではキャンバスアプリのみです。モデル駆動型アプリが必要な場合は通常のDataverseを使います。

Q. SharePointリストのデータをTeams内のアプリで使えますか?

使えます。Dataverse for Teamsを使わなければならないわけではなく、SharePointリストなど標準コネクタのデータソースをそのまま利用できます

まとめ

  • Teamsにアプリを置く最大の利点は「存在を忘れられない」こと。使われないアプリの多くは機能でなくアクセスの手間が原因
  • Dataverse for TeamsはMicrosoft 365ライセンスに含まれる——追加費用なしでデータベースが使える
  • 制限は100万行/2GB・チームごとに1環境・モデル駆動型アプリは作れない・監査ログなし
  • チームを削除すると環境ごとデータが消える。運用ルールを先に決める
  • 費用を抑える構成は「Teams内で、標準コネクタだけで作る」
  • 足りなくなれば通常のDataverseへアップグレードできる。小さく始めてよい

Power Apps全体の位置づけはPower Appsとは、作り方の手順はキャンバスアプリの作り方入門をご覧ください。

参考・出典