Power Appsで作ったアプリを、うっかり壊してしまった——式を書き換えたら動かなくなった、消してはいけない画面を消した。

Power Appsは保存のたびにバージョンを記録しているので、以前の状態に戻せます。ただし「戻しただけでは利用者の画面は元に戻りません」。この仕組みを知らないと、対処したつもりで放置することになります。

前提|保存と公開は別物

ここを理解していないと、何をしても解決しません。

保存 公開(発行)
誰のための操作か 自分と編集権限のある人 アプリを共有している全員
利用者への影響 ない ある
バージョン 保存するたびに新しいバージョンが増える そのバージョンが「ライブ」になる

公式の説明もこうなっています。保存は「自分とアプリを編集できる他のユーザーのために」、公開は「アプリを共有しているすべてのユーザーが変更を使用できるように」する操作です。

編集権限を持つ人だけが最新バージョンを使える——つまり作り手には見えていても、利用者にはまだ届いていない状態があり得ます。

だから「壊した」にも2段階ある

まず自分がどちらの状況にいるかを判断してください。

  • 保存しただけ——利用者にはまだ何も起きていません。落ち着いて直せます
  • 公開してしまった——利用者の画面に出ています。急いで戻す必要があります

「壊したかも」と思ったら、まず公開したかどうかを思い出してください。それだけで緊急度が変わります。

以前のバージョンに戻す手順

  1. Power Appsにサインインする
  2. 左のナビゲーションで「アプリ」を選ぶ
  3. 対象のアプリを選び、コマンドバーの「詳細」を選ぶ
  4. 「バージョン」を開き、戻したいバージョンを選ぶ
  5. 「復元」を選び、もう一度「復元」で確定する

アプリが一覧に出てこない場合は、環境が違っている可能性があります。公式にも「適切な環境を使用していることを確認してください」と注記されています。

重要①|復元は上書きではない

復元すると、新しいバージョンが作成されます。過去のバージョンで上書きするのではなく、「昔の内容を持った最新版」が追加される形です。

そのため復元そのものでデータが失われることはありません。間違えたらまた別のバージョンを選び直せます。

重要②|復元しただけでは利用者に反映されない

ここが最大の落とし穴です。

復元しても、それは保存されただけの新しいバージョンです。利用者が見ている「ライブ」バージョンは変わっていません。

戻すには、復元後に「このバージョンを公開する」を選び、確認画面でもう一度「このバージョンを公開する」を選ぶ必要があります。公開されると、そのバージョンが「ライブ」と表示されます。

公開の選択肢が出ないとき

公式の注記です。「このバージョンを公開する」オプションは、アプリの最新の未公開バージョンに対してのみ表示されます。

つまり復元した後にさらに編集や保存をしてしまうと、そのバージョンは「最新」ではなくなり、公開の選択肢が消えます。

復元したら、余計な操作をせずに公開まで済ませてください。

重要③|6か月以上前のアプリは中身が変わることがある

見落とされやすい制約です。公式にこう書かれています。

「6か月以上前のアプリの場合、このアクションにより、利用可能な最も古いバージョンでアプリが再パッケージ化されます。アプリの元のパッケージから機能が変更されている可能性があります」

古いアプリを戻したとき、まったく同じ状態に戻るとは限らないということです。復元後は必ず動作を確認してください。

自動保存は2分ごと

Power Appsは2分ごとに作業を自動保存します。意図しない変更もバージョンとして残るため、戻せる反面、履歴が増えやすくなります。

切り替えはコマンドバーの「設定」→「全般」タブ→「自動保存」のトグルです。

バージョンノートを残す

保存のドロップダウンには「バージョンノートを使用して保存」があります。更新内容のメモを添えて保存できます。

大きな変更の前にノート付きで保存しておくと、後から戻すときに一発で見分けられます。「日時だけが並んだ履歴」から探す苦労がなくなります。

利用者側はいつ気づくか

公開しても、利用者の画面がすぐ切り替わるわけではありません。

  • 公開した変更が表示されるまで数秒かかる(複雑なアプリでは数分かかることも)
  • すでにアプリを開いている人は、再読み込みが必要

更新通知が出ない環境がある

Webでキャンバスアプリを使っている場合、利用者には「古いバージョンを使用しています。最新バージョンを使用するように更新します」という通知が出て、「更新」ボタンで切り替えられます。

しかし、この通知が出ない環境があります。

環境 更新通知
Webでキャンバスアプリ あり
iframeに埋め込み あり
Teamsに埋め込んだアプリ 該当なし
カスタマイズしたSharePointフォーム 該当なし
Power BIに埋め込み 該当なし

Teamsで配っているアプリでは、利用者に更新の通知が届きません。修正を公開したら、自分でチャットなどに一言入れて再読み込みを促す必要があります。TeamsでPower Appsを使う場合は特に注意してください。

ついでに|しばらく公開していないなら再発行する価値がある

公式が触れている、知られていない利点です。

アプリを発行すると、最新バージョンのPower Appsで実行されるよう更新されます。前回の公開以降に追加された機能やパフォーマンス改善を取り込めます。

「数か月更新を発行していない場合は、再発行するだけですぐにパフォーマンス上の利点が得られる」とされています。動作が重いアプリがあるなら、中身を変えずに再発行するだけで改善する可能性があります。

速度の改善はPower Appsが遅いときの改善策にまとめています。

よくある質問

Q. 以前のバージョンに戻すにはどうしますか?

「アプリ」→対象のアプリ→「詳細」→「バージョン」から戻したいバージョンを選び、「復元」を2回選択します。

Q. 復元したのに利用者の画面が変わりません

復元は保存されただけで、公開されていません。復元後に「このバージョンを公開する」を選んでください。公開されたバージョンが「ライブ」と表示されます。

Q. 「このバージョンを公開する」が表示されません

そのオプションは最新の未公開バージョンにだけ表示されます。復元後に別の保存をしていると消えます。もう一度復元し直し、余計な操作をせずに公開してください。

Q. 復元すると今の内容は消えますか?

消えません。復元は上書きではなく、新しいバージョンを作る操作です。元の内容もバージョン履歴に残ります。

Q. かなり古いバージョンに戻しても大丈夫ですか?

6か月以上前のアプリは再パッケージ化され、元のパッケージから機能が変更されている可能性があります。復元後は必ず動作を確認してください。

Q. Teamsで配っているアプリを更新しました。利用者は気づきますか?

通知は出ません。更新通知はWebのキャンバスアプリとiframe埋め込みでのみ提供され、Teams埋め込みは対象外です。自分で周知してください。

まとめ

  • 保存は編集者のため、公開は利用者のため。保存しただけでは利用者に影響しない
  • 復元は「アプリ」→「詳細」→「バージョン」→「復元」を2回
  • 復元は上書きではなく新しいバージョンを作る。今の内容も残る
  • 復元しただけでは利用者に戻らない。「このバージョンを公開する」まで行う
  • その選択肢は最新の未公開バージョンにのみ表示される。復元後に余計な保存をしない
  • 6か月以上前のアプリは再パッケージ化され、機能が変わる可能性がある
  • 自動保存は2分ごと。大きな変更前はバージョンノート付きで保存しておく
  • Teams埋め込みのアプリには更新通知が出ない。自分で周知する
  • しばらく発行していないなら、再発行するだけで性能が改善することがある

参考・出典

  • キャンバス アプリを以前のバージョンに復元する|Microsoft Learn――復元の手順(アプリ→詳細→バージョン→復元)、環境の確認に関する注記、6か月以上前のアプリが最も古いバージョンで再パッケージ化され機能が変更される可能性、復元後に新しいバージョンが作成されること、「このバージョンを公開する」が最新の未公開バージョンにのみ表示されること、公開後に「ライブ」と表示されること
  • キャンバス アプリを保存して公開する|Microsoft Learn――保存と公開の対象範囲の違い、保存のたびにバージョン履歴が増えること、バージョンノートを使用した保存、2分ごとの自動保存とその切り替え、ライブバージョンの確認方法、公開後の反映時間と再読み込み、利用者へのアプリ内更新通知と環境ごとの提供状況、しばらく発行していないアプリを再発行するとパフォーマンス上の利点が得られること