Excelで掛け算をしようとして、「×」のキーを探してしまった経験はありませんか。電卓と同じ感覚で入力すると、Excelはうまく計算してくれません。

Excelの掛け算には 「*」(アスタリスク) を使います。ただし、実務で本当につまずくのはそこではありません。「消費税だけ固定で掛けたいのに、下にコピーすると答えがおかしくなる」「数字を入れているのに #VALUE! と出る」——こうした場面のほうが圧倒的に多いのです。

この記事では、掛け算の基本から、列全体への一括計算、割り算とエラー対処までを順番に解説します。読み終えるころには、単価×数量の表を自分でひととおり作れるようになります。

まず結論:Excelの四則演算の記号

Excelでは、計算式を必ず 「=」(イコール)から書き始めます。これがないと、ただの文字として表示されてしまいます。

やりたいこと 記号 入力例 読み方
足し算 + =A1+B1 プラス
引き算 =A1-B1 マイナス
掛け算 * =A1*B1 アスタリスク
割り算 / =A1/B1 スラッシュ
べき乗 ^ =A1^2 キャレット

掛け算の「*」は、キーボードのテンキーにある「*」か、数字の「8」のキーを Shift を押しながら打つと入力できます。テンキーがある場合は、テンキーの「*」のほうが速いのでおすすめです。

なお、算数で使う「×」や「÷」の記号は、Excelでは計算記号として認識されません。入力してもエラーになるので注意してください。

基本:セル同士を掛ける

もっとも使う形は、「単価 × 数量 = 金額」です。

A列に単価、B列に数量が入っているとします。C列に金額を出したいときは、C2に次のように入力します。

=A2*B2

単価が1,200円、数量が3個なら、3,600と表示されます。

数式を手で打たずにセルをクリックで指定する

慣れないうちは、セル番地を手で打つとミスをしがちです。次の手順なら間違えません。

  1. C2をクリックして = を入力する
  2. A2をマウスでクリックする(自動で =A2 になる)
  3. * を入力する
  4. B2をマウスでクリックする(=A2*B2 になる)
  5. Enter で確定

この「クリックで指定する」やり方は、離れた場所のセルを使うときにも安全です。

3つ以上のセルを掛ける

掛けたいセルが増えても、同じように「*」でつないでいくだけです。

=A2*B2*C2

ただし、掛ける数が5個も6個もあると式が長くなります。その場合は後述の PRODUCT関数 のほうがすっきりします。

列全体に一括で計算する(オートフィル)

1行目の式ができたら、残りの行に同じ計算を一気に適用します。1つずつ入力する必要はありません。

ドラッグでコピーする

  1. 式を入れたセル(C2)をクリックする
  2. セルの右下の角にマウスを合わせる(カーソルが黒い十字「+」に変わる)
  3. そのまま下にドラッグする

これで、C3は =A3*B3、C4は =A4*B4 というように、行に合わせて自動でずれてくれます。この「自動でずれる」動きを相対参照といいます。

ダブルクリックで最終行まで一瞬で埋める

行数が数百行あるときにドラッグするのは大変です。そこで使うのがダブルクリックです。

右下の角にカーソルを合わせて黒い十字になったら、ドラッグせずにダブルクリックしてください。隣の列にデータがある最終行まで、一瞬で数式が埋まります。

実務ではこちらのほうが速く、行を数え間違える心配もありません。

【重要】決まった数を掛けるときは「$」で固定する

ここが最大のつまずきポイントです。

たとえば、E1に消費税率10%(0.1)を入れておき、各行の金額に掛けたいとします。素直に書くとこうなります。

=C2*E1

C2の行はこれで正しく計算できます。ところが下にコピーすると、次の行は =C3*E2 になってしまいます。E1も一緒にずれてE2(空欄)を見に行ってしまうため、答えが0になるのです。

解決策:$を付けて固定する

ずらしたくないセルには 「$」(ドルマーク) を付けます。

=C2*$E$1

こう書けば、下にコピーしても掛ける相手はE1のまま固定されます。これを絶対参照といいます。

$を打つのは F4 キーが速い

「$」を手で打つ必要はありません。数式の中でセル番地にカーソルがある状態で F4 を押すと、押すたびに次のように切り替わります。

F4を押した回数 表示 意味
1回 $E$1 行も列も固定(これが基本)
2回 E$1 行だけ固定
3回 $E1 列だけ固定
4回 E1 固定なし(元に戻る)

迷ったら1回押して $E$1 の形にしておけば、たいていの場面で問題ありません。

なお、消費税率のような数値は、数式に直接「0.1」と書き込むより、どこかのセルに入れて参照するほうが安全です。税率が変わったとき、そのセルを1つ書き換えるだけで表全体が更新されるからです。

PRODUCT関数:範囲をまとめて掛ける

掛けるセルが多いときは、PRODUCT関数を使うと式が短くなります。

=PRODUCT(A2:E2)

これは =A2*B2*C2*D2*E2 と同じ意味です。範囲でまとめて指定できるので、掛ける数が増えても式が長くなりません。

「*」とPRODUCT関数の使い分け

*(アスタリスク) PRODUCT関数
向いている場面 2〜3個を掛ける 範囲をまとめて掛ける
空欄があると 0になる 無視して計算する
文字が混ざると #VALUE! エラー 無視して計算する

この表で覚えておきたいのは空欄の扱いです。=A2*B2*C2 でC2が空欄だと、空欄は0とみなされるので答えが0になります。一方PRODUCT関数は空欄を飛ばして計算するため、答えが残ります。

「入力途中でも合計を見たい」という表ではPRODUCT関数が便利ですが、逆に「入力漏れに気づきたい」なら0になる「*」のほうが親切とも言えます。表の目的で選んでください。

単価×数量の合計を一発で出す(SUMPRODUCT)

「各行の金額を出してから、その合計を出す」——この2段階を1つの式で済ませられます。

=SUMPRODUCT(A2:A20, B2:B20)

SUMPRODUCT関数は、「対応する行同士を掛けて、その結果を全部足す」という働きをします。上の式なら、A2×B2、A3×B3……をすべて足した金額の総合計が一度に求まります。

金額の列を作らずに合計だけ知りたいときや、請求書の総額を検算したいときに重宝します。

割り算のやり方と #DIV/0! の対処

割り算は 「/」(スラッシュ) を使います。

=A2/B2

#DIV/0! が出るのは「0で割った」から

割り算でよく見るのが #DIV/0! というエラーです。これは「0で割ろうとした」か「空欄で割ろうとした」ときに出ます。数学的に0で割ることはできないため、Excelがエラーを返しているのです。

データがまだ入力されていない行でこれが出ると、表が赤いエラーだらけになって見づらくなります。そこで IFERROR関数 でくるんでおきます。

=IFERROR(A2/B2, "")

こう書くと、エラーになる場合は空欄で表示されます。「-」やゼロを表示したいときは、2つめの引数を "-"0 に変えてください。

割り算の「余り」と「商」を分ける

「箱に何個入って、何個あまるか」を計算したいときは専用の関数があります。

関数 書き方 意味 例(17÷5)
QUOTIENT =QUOTIENT(17,5) 商(整数部分) 3
MOD =MOD(17,5) 余り 2

MOD関数は余りを求めるだけでなく、「1行おきに色を付ける」「偶数か奇数かを判定する」といった使い方もできる便利な関数です。

パーセント・消費税の計算

実務でいちばん多い掛け算が、消費税や割引の計算です。

やりたいこと 数式 補足
消費税額(10%) =A2*0.1 税率はセル参照が安全
税込金額(10%) =A2*1.1 1を足した数を掛ける
2割引の金額 =A2*0.8 1-0.2=0.8を掛ける
税込から税抜を出す =A2/1.1 割り算で戻す
達成率 =A2/B2 表示形式を%にする

「%」のセルを掛けるときの注意

セルに 10% と表示されている場合、Excelの内部では0.1という数値として扱われています。そのため、そのセルをそのまま掛ければ正しく計算できます。

=A2*$E$1

「%だから100で割らないといけないのでは」と考えて =A2*$E$1/100 と書いてしまうと、答えが100分の1になってしまいます。%表示のセルは、そのまま掛けると覚えてください。

掛けた結果に小数が出たら端数処理をする

消費税を計算すると 3,600.4 のように小数が出ることがあります。見た目だけ整えると合計が1円ずれる原因になるため、数式で丸めておくのが確実です。

=ROUNDDOWN(A2*0.1, 0)

端数処理には ROUND(四捨五入)ROUNDUP(切り上げ)ROUNDDOWN(切り捨て) の3つがあります。消費税は切り捨てが一般的です。

桁数の指定や「表示形式で丸めると合計が合わなくなる」問題については、ROUND関数の桁数早見表と表示形式との違いで詳しく解説しています。

掛け算がうまくいかないときのチェックリスト

#VALUE! と表示される

掛けようとしたセルに文字が混ざっていると、このエラーになります。「3個」「1,200円」のように単位まで入力しているケースが典型です。

見た目は数字でも、セルの中で左に寄っていたら文字列です(数値は自動で右に寄ります)。単位はセルから外し、表示形式かとなりの列で表すようにしてください。

他システムから貼り付けたデータで数字が文字列になっている場合は、=VALUE(A2) で数値に変換するか、掛け算の式で =VALUE(A2)*B2 と書く方法もあります。

答えが0になる

次の2つを疑ってください。

  • 掛ける相手のセルが空欄になっている(コピーで参照がずれた可能性。$の固定を確認)
  • %を100で割ってしまっている

数式がそのまま文字で表示される

=A2*B2 という文字がセルにそのまま出ている場合、原因は2つです。

  • 先頭の「=」を忘れている
  • セルの表示形式が「文字列」になっている → 表示形式を「標準」に戻してから、セルをダブルクリックして Enter を押し直す

「####」と表示される

これはエラーではなく、列の幅が足りないだけです。列の境界線をダブルクリックすれば幅が自動調整されて数値が見えるようになります。

よくある質問(FAQ)

Q. 掛け算専用の「×」ボタンはないのですか?

ありません。Excelでは「*」が掛け算の記号です。ただし、セルに × という文字を表示したいだけなら、計算とは関係なく普通に入力できます。

Q. 列全体をまとめて掛けることはできますか?

できます。=A2:A20*B2:B20 と書くと、Microsoft 365やExcel 2021以降では結果が自動で下の行まで表示されます(スピルという機能)。それ以前のバージョンでは、1行ずつ入力してオートフィルでコピーしてください。

Q. 掛け算の結果だけを残して、数式を消したい

結果の列をコピーし、右クリック → 形式を選択して貼り付け → 「値」を選んでください。数式が消えて数値だけが残ります。元データを削除しても結果が変わらなくなります。

Q. すでにある数値に、まとめて同じ数を掛けたい

「形式を選択して貼り付け」の演算「乗算」が使えます。掛けたい数(例:1.1)をどこかのセルに入力してコピーし、対象範囲を選んで 右クリック → 形式を選択して貼り付け → 演算「乗算」 を選ぶと、範囲内の数値がすべて1.1倍に書き換わります。新しい列を作らずに済むので、単位の一括変換などに便利です。

Q. 条件に合う行だけ掛け算したい

SUMPRODUCT関数で条件を掛け合わせる方法か、DPRODUCT関数を使う方法があります。「A商品だけの売上合計」のような集計なら、SUMPRODUCTのほうが扱いやすいでしょう。

まとめ

Excelの掛け算で押さえるべき点を整理します。

  • 掛け算は 「*」(アスタリスク)。式は必ず 「=」から始める
  • 1行目を作ったら、右下の角をダブルクリックで最終行まで一括計算
  • 税率など固定のセルを掛けるときは F4$E$1する
  • 掛けるセルが多いなら PRODUCT関数。空欄の扱いが「*」と違う点に注意
  • 単価×数量の総額は SUMPRODUCT関数 で一発
  • 割り算の #DIV/0!IFERROR で見た目を整える
  • %表示のセルはそのまま掛ける(100で割らない)
  • 小数が出たら数式で丸める(消費税は切り捨てが一般的)

特に「$による固定」は、掛け算に限らずExcelのあらゆる場面で必要になる考え方です。ここでつまずいたときは、「コピーしたときにずれてほしくないセルはどれか」を先に決めてから式を書くと、迷わなくなります。

掛け算・割り算に関わる関数をもっと広く知りたい方は、Excelの数学・三角関数まとめもあわせてご覧ください。丸め・MOD・べき乗などを目的別の早見表で整理しています。

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