「会社ではExcel、でも取引先とはスプレッドシートでやりとりする」——そんな場面が増えています。

結論から言うと、基本の操作と関数は8割方そのまま通用します。SUMもIFもVLOOKUPも、まったく同じように書けます。

問題は残りの2割です。ここを知らずにファイルを変換すると、書式が崩れたり、マクロが動かなかったりして慌てることになります。

この記事では、実務で本当に困るポイントに絞って、両者の違いと移行のコツを解説します。

まず押さえるべき5つの違い

Googleスプレッドシート Excel
保存 自動保存(操作するたび) 手動保存(自動保存は設定次第)
共有 URLを送るだけ・同時編集できる ファイルを送る/OneDrive経由
動作環境 ブラウザ(インストール不要) アプリ(Web版もある)
費用 個人利用は無料 買い切りまたはMicrosoft 365
マクロ GAS(JavaScript系) VBA
いちばん体感が違うのは「保存」と「共有」です。
スプレッドシートには「保存」ボタンがありません。入力した瞬間に保存されています
そして共有はURLを送るだけ。複数人が同時に同じセルを編集できます。「最新版どれ?」という問題が起きにくいのは、大きな利点です。

データ量の上限が違う

大きな表を扱う方は、ここを知っておく必要があります。

上限
Excel 1,048,576行 × 16,384列(1シートあたり)
スプレッドシート 合計1,000万セル(列数は最大18,278列)

考え方が違う点に注意してください。Excelは「行数」で決まるのに対し、スプレッドシートは「セルの総数」で決まります

つまりスプレッドシートでは、列が少なければより多くの行を扱えます。逆に列が多い表だと、行数は早く頭打ちになります。

実務では、数万行を超えたあたりからスプレッドシートは動作が重くなるのが実感です。10万行を超えるようなデータは、Excelのほうが快適に扱えます。

関数の互換性 — 8割は同じ

そのまま使えるもの

日常的に使う関数は、ほぼ同じ名前・同じ書き方で動きます。

SUM / AVERAGE / COUNT / COUNTIF / SUMIF / IF / IFS / VLOOKUP / XLOOKUP / INDEX / MATCH / TEXT / DATE / LEFT / RIGHT / MID / SUBSTITUTE / ROUND …

関数の勉強をやり直す必要はありません。

スプレッドシートにしかない便利な関数

ここが移行の「おいしいところ」です。Excelにはない強力な関数があります。

関数 できること
QUERY SQLのような書き方でデータを抽出・集計できる。これ1つで複雑な集計が済む
IMPORTRANGE 別のスプレッドシートからデータを読み込む。ファイルをまたいで参照できる
ARRAYFORMULA 数式を1つ書くだけで列全体に適用できる。オートフィルが要らなくなる
GOOGLEFINANCE 株価や為替レートを自動取得する
IMAGE URLから画像をセルに表示する
SPARKLINE セルの中に小さなグラフを描く

特にQUERYとIMPORTRANGEは、Excelユーザーが一番「便利だ」と感じる機能です。移行したらまずこの2つを覚えてください。

Excelにしかないもの

  • Power Query(データの取得・整形)
  • Power Pivot(大規模データのモデリング)
  • VBAマクロ(スプレッドシートではGASに書き換えが必要)
  • 一部の専門的な統計・エンジニアリング関数
  • 細かい印刷設定・ページレイアウト

本格的なデータ分析や、複雑な帳票の印刷が必要ならExcel——という住み分けになります。

ExcelファイルをGoogleスプレッドシートに変換する

手順

  1. Googleドライブを開く
  2. .xlsx ファイルをドラッグ&ドロップしてアップロード
  3. アップロードしたファイルをダブルクリックで開く
  4. メニューの「ファイル」→「Googleスプレッドシートとして保存」

これでスプレッドシート形式に変換されます。元の.xlsxファイルはそのまま残りますので、失敗しても元に戻せます。

変換せずにそのまま編集することもできます。
アップロードした.xlsxを開くと、Excel形式のまま編集できるモードで開きます。相手にExcelファイルで返す必要があるなら、変換しないほうが安全です。

変換で崩れやすいもの

ここが実務でいちばん困るポイントです。変換後は必ず確認してください。

崩れやすいもの どうなるか
VBAマクロ 動きません。GASへの書き換えが必要
ピボットテーブル 設定が失われることがある。作り直したほうが早い
グラフ 種類や書式が変わることがある
条件付き書式 複雑な条件は再設定が必要な場合がある
フォント・行の高さ 微妙にずれる。印刷レイアウトは要確認
一部の関数 互換性のない関数はエラー表示になる

「マクロ入りの重要なファイル」は移行に向きません。Excelのまま使い続けるのが無難です。

逆に、スプレッドシートをExcelで開くには

「ファイル」→「ダウンロード」→「Microsoft Excel(.xlsx)」を選ぶだけです。

ただしこちらも注意点があります。

  • QUERYなどスプレッドシート専用の関数は、値に変換されるかエラーになります
  • IMPORTRANGEのリンクは切れます(その時点の値が残る)
  • 共同編集の履歴・コメントは引き継がれない場合がある

スプレッドシート専用関数を多用したファイルは、Excelに戻すことを前提にしないほうがよいということです。

VBAマクロはどうなるのか

スプレッドシートでVBAは動きません。代わりにGAS(Google Apps Script)を使います。

VBA GAS
言語 Visual Basic系 JavaScript系
書く場所 Excelの中 「拡張機能」→「Apps Script」
実行 PC上 Googleのサーバー上(PCを閉じても動く)
得意なこと Excel内の自動化 Gmail・カレンダー等との連携

書き方は違いますが、「PCを閉じていても決まった時刻に自動実行できる」のはGASの大きな強みです。定期レポートの自動送信などはGASのほうが向いています。

結局どちらを使うべきか

スプレッドシートが向いている場面

  • 複数人で同時に編集する(進捗管理表、シフト表、アンケート集計)
  • 外部の人と共有する(相手のPCにExcelがなくても開ける)
  • スマホからも確認したい
  • Googleフォームの回答を集計する
  • 費用をかけたくない

Excelが向いている場面

  • 数万行を超える大きなデータを扱う
  • Power QueryやPower Pivotを使った分析
  • VBAマクロの資産がある
  • 印刷レイアウトを厳密に作り込む(請求書・報告書)
  • オフラインで作業することが多い
どちらか一方に決めなくてかまいません。
実務では「共有するものはスプレッドシート、作り込むものはExcel」と使い分けるのが現実的です。
ファイル形式は相互に変換できるので、場面に応じて選べば十分です。

よくある疑問

スプレッドシートはオフラインで使える?

使えます。Chromeの拡張機能を入れ、事前に「オフラインで使用可能にする」設定をしておく必要があります。準備なしにネットが切れると開けないので、外出前に設定しておくと安心です。

ショートカットキーは同じ?

コピー(Ctrl+C)、貼り付け(Ctrl+V)など基本は同じです。ただし一部異なるものがあり、スプレッドシートではCtrl+/ でショートカット一覧を表示できます。

関数名は日本語でも入る?

どちらも英語名が基本です。スプレッドシートは言語設定によって関数名の表示が変わることがありますが、英語で入力すれば問題なく動きます。

データが消えたら戻せる?

スプレッドシートは「ファイル」→「変更履歴」→「変更履歴を表示」から、過去の状態に戻せます。誰がいつどこを変えたかも分かるので、共同編集での事故に強いのは大きな利点です。

まとめ

  • 関数は8割そのまま使える。SUM・IF・VLOOKUPなど日常的なものは同じ書き方
  • 最大の違いは「自動保存」と「URLでの同時編集」。最新版の混乱が起きにくい
  • データ上限はExcelが1,048,576行、スプレッドシートは合計1,000万セル。考え方が違う
  • スプレッドシート独自のQUERY・IMPORTRANGE・ARRAYFORMULAは覚える価値が大きい
  • VBAは動かない。GAS(JavaScript系)への書き換えが必要
  • 変換で崩れやすいのはマクロ・ピボットテーブル・グラフ・条件付き書式・印刷レイアウト
  • 使い分けの目安は「共有するものはスプレッドシート、作り込むものはExcel」

※仕様・上限値は変更されることがあります。最新の情報は各公式ヘルプをご確認ください。

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